確か、昨夜は柏原の部屋にいたのよ。
それがどうして屋敷の私の部屋で朝を迎えたのかしら?
おまけに、着替えもしている。
いつものネグリジェだ。
柏原の胸に頭をのせて考えてみる。
「そうよ、柏原。執事辞めないわよね?」
「ええ……もう貴女なしでは眠れない体質になってしまいそうですから」
「不眠症なのかしら?」
お気の毒に……
まさかの病のカミングアウト大会ね。
柏原は盛大にため息を吐きだす。
胸が大きく上下した。
「もっと危険な病かもしれませんね。生命に関わるかもしれない」
生命に?
病って?
そんなの初耳だ!
カミングアウト大会断トツ優勝じゃないの!
でも困ったわ。
「そんな……私が、柏原がいなくなったら嫌だわ! そんな病気、はやく治してよ!」
「今、また悪化いたしました」
ええ?
どうしたらいいの?
柏原は、胸の辺りを苦しそうに押さえる。
「柏原ぁ……」
待ってよ!
何かの冗談よね?
必死に柏原の手を握りしめた。
「どんどん酷くなる病のようです。治療薬は……」
薬があるの?
「どこにあるの? お金で買える?」
今は医学だってお金で買える時代よ。
良い薬に、良い医師を呼ぶわ。
柏原の為なら、いくら払っても惜しくない。



