「陽子さんは、お父様とお母様だけじゃなくて……柏原まで私から奪うの?」


柏原が何を考えているかなんて問題じゃない。

私には、絶対に柏原が必要なのよ……


「私はお嬢様の幸せを願っております」

「だったら柏原のこと教えて……私、柏原のこと探そうとしたのに、どこにいるかもわからないのよ……」



悔しい、悔しい、悔しい。
こんな女に頼まなきゃならないんて……



「彼のその境遇や生い立ちを、茉莉果様はご存知ないのですか?」


「知らないわよ! 誰も教えてくれないもの!」






私の涙は、制御不能に流れ出した。ナツに、フラれた時より泣けてくる。

陽子さんの落ち着いた態度と、柏原の事をよく知っている素振りにも腹がたつ。


なんで、私が知らない事をこの女が知ってるのよ!




「そうですか、それを知れば茉莉果様は違う執事を雇おうと決心がつくかもしれませんね。いいです、教えましょう」