柏原は、心底嫌そうに歩く。
「なによ! 光栄でしょう?」
「貴方があの貴婦人ならば、私は路地で倒れる名もなき男でございましょう」
「私が雇ってあげるわ。感謝しなさい」
「ですが……茉莉果様」
「もういいのよ! でもね柏原」
「はい」
「ルネサンスは、やっぱりお祭りだと思う。羽がいっぱいついた水着の女が踊ってるのテレビでみたわ。現在も続いてるお祭りよ」
「茉莉果様……それはブラジルのリオのカーニバルだと思います」
「私が間違えてるって言いたいの?」
柏原はわかってるようで、実は何もわかってないわ。
私がいないとダメね……
全く世話の焼ける執事だ。
「お嬢様、芸術作品を堪能されたら初等部の歴史の教科書を見直してみましょう」