────浩輔を見送りして、応接間で一人紅茶のカップを手にする。
「はぁ……せっかくお友達になれたのに」
小さなため息と一緒に紅茶を飲み、スコーンをかじった。
乾燥したクランベリーが刻んでいれられたスコーンだ。さっき食べたのは紅茶のスコーンね。
私が飽きないようにと柏原が工夫して、色々な味のスコーンを焼いてくれる。
「お嬢様、明日より十六世紀ルネサンスの画家の美術展が開催されますが、チケットを手配した方がよろしいでしょうか?」
「そうね……車で連れてってくれるなら、行くわ」
「かしこまりました」
綺麗なお辞儀をして、柏原は素早く扉を閉めた。
柏原が然り気無く、テーブルに置いたパンフレットに目を通す。
フィレンツェの街並みと『十六世紀ルネサンス』と大きく書かれた華やかなパンフレット
祖母は絵画が大好きだった。この家にも、祖母が大切にしていた絵画が至るところに飾られている。
その影響で、私もたまには美術館に足を運ぶようにしている。
今回の美術展は、お父様がお世話になっているレコード会社が協賛しているようだ。以前、柏原に『行きたい』と伝えていたのを、彼は覚えていてくれたようだ。