「茉莉果ちゃん、俺君のことが……
――RRR
――「ごほんっ! 失礼いたします、お嬢様」
あら、いいところでタイミングよく浩輔の携帯電話が鳴り出し、うちの執事が部屋に入ってきた。
「柏原、呼んでないわよ」
「さようでございますか? 私、お茶のお代わりを用意してまいりました」
「まだ、飲んでないもの」
「もしもし! えっ? マジで?」
柏原は、無駄のない動きで私達のカップに淹れたてのコーヒーと紅茶を注いだ。
「おう、わかった」
浩輔は、ブラウンのスライド式の携帯電話にため息を落とすと、私を見た。
「ごめん茉莉果ちゃん。なんでだろ、親父がリストラされたって……」
「栗鼠と虎? まあ、なんでかしら?」



