「顔近くない?」


「そうかしら?」



慰めてあげてるんだもの。
柏原もいつもこれくらい至近距離で見つめてくるわよ。




「て、照れるな……そうだ麗香ちゃん何か俺の事言ってた?」


「ううん。私達、親友だもの必要以上に連絡とらないの、年に数回しか会わないし」


「そっ……そうなんだ? はははっ…変わった親友だね」

浩輔の肌は柔らかくてキメが細かい。女の子よりも綺麗な肌かもしれない……

それにしても、こうして浩輔の目を見つめると深く傷ついた様子もなさそうだ。

これなら大丈夫そうね?

精神力が強い方が、執事にも向いている。


今は、ナツに振られて執事に苛められた私の方が傷は大きいかもしれないわ。


ナツ……

思い出すと涙が溢れそうになる。



「ちょっ……茉莉果ちゃん? どうした?」

言ってもいいかな……?
誰にも話せなかった事を今なら話せてしまえそうだ。


「私も、彼氏と別れちゃったの……『俺は茉莉果にふさわしくない。大好きだけど、離れよう』って」


確かそんな意味だった気がするわ。ナツの口から突き付けられた突然の別れは、衝撃的すぎて記憶が曖昧だ。