────「彼の名前は、柳原捺也。高校二年……お嬢様と同じ学年でございます。友達や親からは『ナツ』と呼ばれているようです」


「ナツかぁ……」


 モーニングティーは、ダージリンにキャラメルシロップを溶かした甘い紅茶。それを片手に、イケメン情報を確認していた。


「お嬢様、この書類に目を通されましたか?」


 私が起きる前に、屋敷へやってきて朝食を用意してくれる柏原。

 その忠実な執事は、怪訝な顔で私を見る。



「昨日は眠くなっちゃったのよ」


 ヴァイオリンのレッスンで疲れ果てていたのよ。


「せっかく私がトライアングル(作者が書いた三角関係の恋と友情を描いた小説)本編でも出てこなかったナツの本名を作者に考えさせたのに……」


「ん? 何か言った?」


「いえ、彼は今週の日曜日に開催されるバスケットの他校との練習試合に出場されるようです」


 えっ? 試合!?


「連れていって!」


 行きたい!! 行きたい!!
 イケメンがスポーツする姿が生で見られるなんて!


「柏原! S席最前列真ん中の席を、いくら払ってもいいから確実に手に入れて頂戴!」