「気分が落ちつきます」と柏原が用意してくれたカモミールティーを一口飲む。



お父様もお母様もナツも、皆私の前からいなくなっちゃたわ。

私のどこがいけないんだろう?
どうすれば、私と一緒にいてくれるんだろう?



そんなこといくら考えても一人じゃ答えが出せない。

出てくるのは、涙だけだ。




部屋に入って読みかけの小説を手にとる。


「火星人を見た」と嘘をつき牢獄に統監されている男が、愛しい女性の幸せを願うという素晴らしい小説だ。

男は、自分は彼女に相応しくないと思い、自ら嘘をつき牢獄に入る運命を選ぶ。

その頃、彼女は?

という所まで読んだ。




ナツも、この男と同じような心境だったのかしら?

私に自分は「似合わない」と言っていたし、一緒にいるのが辛いから別れを選ぶ。


私はそんな愛情欲しくないのに……


常に会いたい時に会えて笑い合っていれる距離にいたい。




キッチンからデミグラスソースの良い香りが漂っている。