「お譲様、ドレス姿でいらっしゃるからお身体が冷えてしまっている」


柏原のジャケットが肩にかけられた。



「さあ、屋敷に戻りましょう」


車に乗り込むと滑るように発進する。
車内は暖かく、柏原の温もりが残るジャケットはさらに暖かい。




「ううっ……柏原」



泣けてきた。

恋愛なんて簡単なことだと思ってた。



イケメンみつけて、デートして、食事して


そんなの簡単なことだと思ってた。




柏原は無言で運転を続けた。
ジャケットがぐちゃぐちゃになるくらい、私はただ涙を流した。