その日から……


お父様とお母様は数日、屋敷でゆっくりと休暇をとるというので私の生活は一変した。

静かだった家は、笑い声と音楽が溢れ出す。



だけど柏原と二人だけの静かな家が恋しい私は、なんて親不孝な娘のかしら?





柏原の運転で、お母様とショッピングをしたり(大半は怪しげな骨董商か露店商)

お父様が柏原の代わりに学校まで迎えに来たり(帰りに迷子になって、結局柏原が迎えにきた)


両親は、日本に滞在する目的が休暇を過ごす為なので普段会えない時間を穴埋めするように私を楽しませてくれるのだ。





『もしもし? なんだよ茉莉果かよ』

「ナツ! 久しぶり!」


そのような状態だから、当然最愛の彼氏のナツにも全然会えていなかったのだ。

近々公開される映画のサントラの打ち合わせで両親と陽子さんがいない隙をみてナツに電話をしてあげた。





『もう電話こないのかと思ってたよ』

ナツは残念そうな溜め息を漏らす。

きっと私に会えなくて心が千切れてしまいそうに違いない。


「ごめんなさい。両親が帰国していて、連絡できなかったの寂しかった? 会えなくて」


『いや、そういう意味じゃなくてー! 俺もかまわれなくて、安心してたんだ……茉莉果!』


「なっ? なに?」