素敵なディナーは、私の心配を他所に楽しくすすんでいく。



そういば、柏原の食事をする姿なんて久しぶりに見た。

背筋を伸ばし紳士の様なテーブルマナーは、さすが私の執事。



メインの白身魚の香草焼きトリュフ仕立ては最高の味。


学校で行われる音楽祭で、お父様が作った曲をお母様と私が演奏する事は決定してしまったようだった。





「──────はぁ柏原のバカ……」


帰りの車は、両親の誘いを断り柏原の運転するいつもの車に乗り込む。

何故かしら、一番心を許さなくてはいけない両親より柏原と二人きりが本音で語り合えるような気がする。



「何か仰いましたか? お嬢様」


「私がヴァイオリン練習不足なの知っててなんで助けてくれないの?」


柏原はわざとらしく驚いた振りをする。


「お嬢様! ご自分の練習不足に気づかれていたのでございますか?」


なによっ!
本気で私を馬鹿にしてるのね? 性悪執事……


「ですが、ご両親に伝えたい事はご自分の口から伝えるべきだと思います」


「そうだけど」


「お嬢様、嫌な事や言いたい事はご自分で確りと伝えるべきです」



そうだけど……
柏原は言わなくても理解してくれるから、それに馴れてしまったのかもしれない。