「旦那様、おかえりなさいませ。私は奥様のお出迎えに行って参ります」
「ああ、柏原くんも元気そうで! 荷物をよろしく頼む」
「かしこまりました」
お父様の背中越しに、柏原の冷静な声が聞こえた。
というか助けなさいよ!
貴方の大切なお嬢様が、筋肉馬鹿な父親のおかげで窒息死寸前よ。
「お父様……くっ苦しい……」
「そうか! 茉莉果は、私に会えて胸が苦しい程に嬉しいか!」
ちっ……違う
ますますお父様の絞め技が極り、三途の川からおばあ様が手を振っている。
ヤバイわよ頭がクラクラしてきたわ。
「茉莉果っ! あなたどいて!」
おばあ様に、『茉莉果にはまだ早い』と言われ私は現実世界に帰るのだ。
そんな私に今度は……
鳥がけたたましく歌うような超ソプラノボイスのお母様の声が耳をつんざく。
「茉莉果あぁ! ああん! 元気にしてたのぉ?」
今度は華奢な母に抱かれているので、体に酸素を与えられて肩が上下する。
「……ハァハァ、お母様……ごきげんよう」
「お土産が沢山あるぞー! 茉莉果! エジプトでかなり状態のいいミイラが売ってたのだが、輸出はできないのが残念だったのだ」
はぁ……やっと呼吸が落ち着いたわ……
それにしてもミイラ?
それを私が喜ぶとでも?



