柏原は持っていたトレイを盾みたいにして私に向けた。



「お父様とお母様に連絡をして欲しいわ」


「何ゆえに? でございましょう」


「音楽祭に招待したいのよ……」


柏原は「そんな事か…」と小さく口の中で呟くと、左腕を床と垂直に付きだし軽く頭を下げた。

執事の誠意ある解答の姿勢だ。


「かしこまりました。お二人とも貴女の頼みならば、さぞかしお喜びになられることでしょう」


そうよね。
ここ何カ月か会っていないけど、私も二人に会いたいわ。


目の前の美味しそうな真っ白いレアチーズに銀のフォークを入れる。

一口食べると極め細かな優しい甘さのチーズの味に舌鼓する。


ローズヒップティーは少し酸っぱい味がして、レアチーズの甘さとよく合う最高のコンビネーション。


さすが、柏原ね。