私もちいさい頃は、ピアノを習っていたらしい。覚えてないけどね。


 私には、音楽の才能なんてないもの。



『ピアノの楽譜は沢山の音を一度に読まないといけないから嫌。ヴァイオリンなら一つの音を出せばいいから……私はヴァイオリンがやりたい!』


 そんなわがままを私が言ったらしく、両親は私に"ヴァイオリンの才能があるのかもしれない!" と世界の巨匠に娘を託したのだ。


 でも……きっと両親も気がついている。



 全然上達しないもの。先生だって気がついている。


 だけど、このヴァイオリンを辞めてしまったら私は'紫音家'にはいられないのよね。音楽一家として世間では取り沙汰されているんだもの。私、きっと島流しよ。カリブの海でイルカ見て余生を過ごすことになるんだわ。



 有名な作曲家のお父様の作る曲は、穏やかなメロディーだけど奇抜で難解で実力がないと奏でる事ができない。

 私は今まで一度もお父様の譜面を弾いた事がなかった。


 夢は、お母様とのコンチェルトだけど……実現は厳しいかもしれないわね。


 音楽に触れると同時に、私は凄く疎外感をかんじる。