「ホテルの近くに美味しいと噂のラーメン屋さんがあるんですよ―」


「へぇ、そうなの?そういや俺も腹減ってたんだった」


「じゃあ、着いたら一緒に食べに行きましょうよっ!」


「そ、そうだね」




し、しまった…。


なんか俺…断るタイミングを逃してる気がする…。



俺が綾音に少しぎこちなく微笑みを向けると、プシューと扉が締まりバスがゆっくりと走り出した。







どこまでも続く白銀世界。


バスの道中のほとんどを、綾音は外の景色をただ静かに眺めていた。


先ほどまでの明るく多弁なイメージとは違って…

哀愁漂う雰囲気。




へぇ…こんな表情もするんだ。



景色を楽しんでいるように見えつつ

はたまた何かを考え込んでいるような…



その姿が俺の中でとても印象に残ってしまった。