「!!」








本来ならば麻生さんのそれは意味が分からない行動だろう。


しかし俺にはその仕草が何を意味するのかすぐに分かってしまう。



まさかの三度目のチップだ…。



こ、この人……

絶対この展開よんでやがったな!







しかし俺は気にせず素早く財布から一万円を抜き取ると麻生さんの手に叩き付けた。




「あぁ、そう言えば長谷川様は本日仕事のあとに小樽に夜景を見に行くとおっしゃっていましたね」


「お、小樽ですか…!?」


「はい。夕刻の夜景を見てから空港に向かうと仰っておりました」


「!!」




今日、北海道を経つなら空港で待ち伏せする方がいいか…?



俺は腕時計を確認する。



いや、今からなら急いで小樽に向かえば夕方前には十分着きそうだ。







「ありがとうございます、麻生さん!!」




ぼろぼろのタキシードに必死の俺の様子を見ても、麻生さんは何も聞かずただ優しく微笑んだ。






「相良様、よい1日を…」