「着いたわよ」
放心してたみたい。いつ、どこに向かってたのか見ていなかった。
「ほら、降りなさい」
さっき同様で腕を引かれる。
「諦めただけあるわね」
クスクス笑って、どこかのお店に入っていく。
「この子なの、店長」
目鼻立ちのはっきりした外人が、あたしを上から下まで舐めるようにみてる。
その視線に合わせたくないような、気持ち悪さがある。
「まあ、いいんじゃないかな」
その店長という人がそういうと、別の人が奥から出てきてあたしにおいでと手招く。
「ママ?」
一歩踏み出すことができずにいると、ママがグイグイと背中を押す。
「いいから早く行ってらっしゃい」
どうみても普通の場所じゃない。お酒が置いてある時点で、そういう店だということはわかる。
「ママ!」
「早くしなさい」
説明を乞う声にも、応えてくれない。
そのままあたしはカーテンの奥へと進まされる。
「なに、ココ」
顔を歪めた。なんとも形容しがたい匂い。いろんな匂いが混じってる。
「香水?」
むせそうになりながら、言われるがままに進んでいく。奥にはきれいなドレス。
「好きなの選ぶ。着たら出てこい」
たどたどしく説明され、仕方なく薄いグリーンのラメの素材のドレスを着る。
「お姉さん、若いね」
床にベタリと座ってた女の子が話しかけてきた。
「いくつ?」
「まだ15です。12月に16になります」
そう返すと、悲しげな表情になった。
「あの、なにか」
不思議に思って聞けば、「仕事が減る」という。
「あたしが来たからですか?」
「そう」
なんで?どうして?と首をかしげていると、さっきの人があたしを迎えに来た。
「店長待ってる」
「あ、はい」
靴を差し出され、慣れないヒールを履いて歩いていく。
「あら、十分に大人よね」
というママの声に、
「いい、客増える」
と店長という人が頷く。
「お客って、ここで働くの?あたし」
ママに聞くと、薄く笑うだけ。
「それじゃ、ちゃんとこっちに売り上げ分よこしてね」
あたしには何も言葉をかけることなく、出て行ってしまった。
「メイクしてやれ」
「わかりました」
また背中を押され、さっきの部屋に逆戻り。
部屋に入った瞬間、数人いる女の子たちが一斉にあたしを睨みつけていた。

