学園祭の時期。

定時制も全日制ほどじゃないけど、参加をすることになった。

毎年恒例の催しがあるという。

「代表を選んで、作文を発表してもらう。今年のテーマは、絆。みんな、締切日まで書いてくるように」

そういうことだ。

「作文か」

文章を書くのは正直苦手。話すのも苦手だし。

休み時間。思い切ってまたメールを打つ。

あの日から、伊東さんがいない時間を見計らって凌平さんにメールをする回数が増えた。

『今日、学園祭で発表するからって、作文書きなさいって言われました。代表になることないだろうけど』

時間をかけて送ったメール。次の休み時間に携帯を開くと、メール受信の文字。

誰かがみるわけでもないのに、窓際に寄って、こっそり確認する。

『悩んだら相談に乗るよ。何でも言ってね』

そう書かれたずーーーーっと下に、文章が続いてた。

スクロールさせ、その文字をみて固まった。胸が痛い。頭がその文字でいっぱいになる。

『会いたいな』

たった五文字。なのに、こんなにもあたしを揺らがせる言葉。

「会いたい、か。でも……無理だよね」

コンビニの方は大丈夫なのかと心配になるほど、伊東さんはあたしにかかりきり。

ママと上手くいってるのかも不安になるほど、あたしに時間を割く。

あと1時間あるというのに、校門のそばには車が見えた。

「一人でいた時は自由といえば自由だったけど、こんなに窮屈なのも困るな」

愛されているのに、悩む必要はないはず。

けれど、一番欲しい愛情はここにはない。

「ママ、元気なのかな」

あんなことをされても、まだ気になる。

だって……だって、あたしのママだから。

「授業始めるぞ」

その声にあわてて席に着く。始まる授業。落ち着いて出来る勉強。整った環境。

「はぁ」

ため息をつき、物思う。

(絆、か。作文に何を書けばいいんだろう)

家に帰ってからお兄ちゃんは何を書くのか聞いてみようと思った。

「次の英文を訳せ。えー、ここはですね」

先生の声もどこか頭に入ってこなかった。