それからさらに三日。
学校も休み続け、仕事も休み続けた。
行くのは怖かった。ママがどこかで張ってたらとも思えたし。
お兄ちゃんとも話し、伊東さんが送り迎えをしてくれることで話が決まった。
伊東さんを信用できるかというと、正直出来ない。
ママ寄りだと今でも思ってる。
お兄ちゃんがなるべくは一緒にと言ってくれた。
心さんもお兄ちゃんと一緒がいいという。
久しぶりに会った心さんは、すこし拗ねていた。
「ナオトったら、彼女より妹ってどうなの?」
「ごめんなさい」
謝るあたしに、「ナオトがイケナイんだから、謝らないで」と屈託ない笑顔を見せてくれた。
凌平さんの家を出る日、凌平さんがちょっとおいでと指先で呼ぶ。
心さんと話しているお兄ちゃんを横目に、すこしだけ近づいた。
「あのさ、指輪出来たら渡したいから」
「あ、はい」
それだけのことを、なんでコソコソ話してるのかって思った。
「でね、連絡取れるようにしたいんだ」
という。
「お兄ちゃんに言ってもらえれば会いにきます」
そう返したあたしに「やだ」という。
子供みたいな返事に、顔が緩んだ。
「でもあたし、携帯は」
服とかと一緒に捨てられてた、あたしの携帯。
後になって、ゴミステーションに袋に入ったままあったという。
でも伊東さん名義のそれは、使い続けるのに少し抵抗があった。
言葉を濁していると、手のひらに乗せられたひとつの携帯。
「これ、俺のなんだ」
「え?」
「内緒で持っててよ。マナの携帯、あとで見つかったとはいえ、オヤジさん名義だし、チェックされてたら嫌だし」
鈍い金色した派手な携帯。
「俺の仕事用のやつなんだ。仕事用の電話は、プライベート用のに来るように連絡してあるし。……ね?持ってて」
迷う。そんな勝手して、怒られないかとか色々。
正直なとこ、あたしが何も言ってないのに、抵抗があることを分かっててくれたのがうれしかった。
「マナも十分に大人だと思うよ。自分のことは自分で決められるよ」
「そう……なんですか?」
あたしが自分のことわかってないのに、あたしのこと知ってる風の口調。
「……じゃ、じゃあ、とりあえず預かっておきます」
曖昧に返すと「それでもいいよ、持ってて」とあたしの耳に小さくキスを落とした。
「きゃっ」
思わず上げた声。
「凌平?マナ、今何かされたのか」
そういいあたしに近づくお兄ちゃんに、キスされたなんて言えなかった。
言えば唇の感触を思い出しそうだったんだもの。

