ふわふわした軽いパーマがかかった髪。
薄茶の髪が、部屋の明かりで少し透ける。
キレイだなってぼんやりみてしまう。
肌もきれいだ。男の人なのにな、なんて思った。
まるでキスでもしそうな距離に、凌平さんて人の顔がある。
でもあたしはときめきもせずに、視線だけまた俯いた。
「こっち見てればいいのに」
クスクス笑い、テキパキと手際よく手当てしてくれる。
ソファーに腰かけているだけなのに、わき腹に痛みが走った。
「ん?そこも痛む?」
まさか蹴られたとはいえずに、頷くだけのあたし。
「じゃ、湿布でも貼ろうかな」
大きな湿布を手のひらで挟んで、いつまでも貼らない。
不思議そうに見てると、ふふと笑ってから教えてくれた。
「場所が場所だけに、急に冷たいのを貼ったら、マナがビックリしちゃうだろうと思って」
あたためてくれてたってこと?
(変な人。初対面なのに、あたし)
こんな風に小さな気づかいをされると、どう反応していいのかわからない。
されたことないから、どうしていいのかなって迷う。
「あとは服だね」
救急箱と洗面器を片付け、奥の部屋に入って行った。
「これ、着てもらってもいいかな」
長いTシャツ。それと、短パン?
「女の子の下着なんてないからさ、ごめんね」
受け取り、立ちあがって着替えようとした時、カーテンがするりと床に落ちた。
「……あ」
太ももに、薄茶色の汚れ。
それを見た時、ママにされたことがよみがえる。
裸のまま、ストンとソファーに腰を落とす。
「マナ?」
頭がガンガンと打ちつけられたかのように痛む。
「う……」
両手のひらで顔を覆う。涙が溢れて、指の隙間からこぼれていく。
涙でこの汚いシミがなくなればいいのに。
「さっきの男にやられたの?」
静かな、さっきまで聞いてた声より低い声で聞いてきた。
ううんと首を振りながら涙が流れ続ける。
「ママ……ッ」
恐怖感しかくれないママの顔が目の前にあるみたい。
呼吸が一気に早くなって、朦朧とした。
「マナ!」
凌平さんという人が、なにか袋をくれて、
「これ、口と鼻覆うみたいにして。……そう。そのまま深呼吸だよ。……ゆっくり、そう……スーッ、ハーッ……そう。大丈夫だよ」
そのまま呼吸をしろと教えてくれた。
しばらくして呼吸が楽になった途端、力が抜けた。
「マナ?」
このまま目が覚めなきゃいいのにと願いながら、意識を手放した。

