孤独という言葉を思い出す。
寂しくないと思えるのはいつなんだろうと思いながら、何年も過ごし。
愛されたいと願い。
やっと手を伸ばした先に、誰かのぬくもりが触れると思ってたのに。
「やっぱりアキんとこ、逝った方が、いい?」
力が抜けていく。
人間生きたいと思えるナニカがなきゃダメっていうけど、本当だって思えた。
今のあたしには守ってくれる人も、一緒に笑いたいと思える人も。
何かをしたいという目標も、いたいと思える場所も……ない。
ゼロだ、あたし。
「う……ふ、っく」
誰もいないのに堪えながら泣く。
泣けば体の水分が減ってしまうのに、体に残っている水分のすべてを出しつくすほどに泣けてきた。
「一回だけ、でいい、か……ら。誰かに」
誰もいないのに手を伸ばす。
触れたかった。誰かのぬくもりに、心に。
そしてそれは、あたしも同じだった。
触れてほしかった。
興味を持ってほしかったなぁ。
「あ…ぁ」
力がどこにも入らなくなってきた。
目がかすむ。白くぼんやりとした景色。
玄関から誰かが入ってくるわけないのに、顔はそっちに向いてしまう。
気づいてって最期の最後まで祈りたくてたまらなかった。
「ママ」
絞り出した言葉は、最後まで求め続けた人の名。
涙の温かさが頬から伝って、床にこぼれる頃には冷たくなってく。
その冷たさにまた涙がこぼれて、意識を失くした。
もうこのまま死んでしまえば、寒い思いも辛い思いもしなくていいよねと諦めかけてた。
ふわり。
揺れて温かくって、思わず頬が緩んだ。
目を開けた先。
そこが天国だったならあたしは許されたことになるのかな。
アキに、ママに、パパに、すべての人に。
目を開けたいのに、目が開かない。
やっぱり死んだんだ、あたし。
でもここ、あったかいよね。
かろうじて何かが聞こえる。誰かが話してる。
それから、車のエンジン音。
(エンジン音?)
じわりと背筋が凍った。そこの場所は温かさを感じるのに、まずい人がいる気がした。
誰かがあたしを運んでる。聞いたことがない声の誰か。

