初めてきた場所。広いんだな。
「迷いそう」と呟くと、二人が笑う。
「大丈夫。ちゃんとそばから離れないから」
迷子にならないっていうための言葉なんだろうと思うのに、意味を履き違えたくなる。
過剰反応しちゃってるのかな、一人の生活が本当に嫌だったんだって気づかされる。
「はい、コレ」
横にいた伊東さんから、可愛い飾りのついたカギを手渡される。
「なんですか、コレ」
少し高く掲げてブラブラさせていると、お兄ちゃんが同じくカギをブラブラさせていた。
「え?」
驚くと、「俺とお揃いだぞ」と笑う。意味がわからない。
伊東さんがお兄ちゃんの横に立ち、お兄ちゃんの肩にポンと手を置く。
「マナちゃん」
「はい」
不思議に思って見ていると、「ナオと、一緒に暮さないかい」と伊東さんが言いだす。
「は?」
「そうそう。俺と一緒に暮らそうぜ。マナ」
上手く愛想笑いも出来ない。
「冗談、だ……よね」
男の子と同居?そんなのありえない。
「冗談でこんな話、出来っかよ」
笑ってた二人は真面目な顔つきになって、もう一度ハッキリ言った。
「俺と暮らそう、マナ」
「ナオと暮らしてみて。マナちゃん」
って。
一歩後ずさる。
「……あたし、何かしたの?」
さっきまであった安心感が薄れていく。
自殺しかかったところを助けてくれたってだけで、信じかけてた。
安心してた。きっとパパやママより。
何かの罰?
お兄ちゃんと一緒に暮らすって、急すぎる。
「何もしてないよ、マナちゃんは」
「じゃどうして?」
ホームセンターの通路で固まったままのあたし。
「あっちにレストコーナーあるから、そこで少し話してもいいかな」
あたしの混乱にも伊東さんの笑顔は変わらないまま。
先に歩いていく二人に遅れて、レストコーナーに向かった。
お兄ちゃんが手招きしてる。行っていいのか、まだ迷ってた。

