手の甲で拭っても拭っても、いつまでも溢れて止まらない涙。
やっぱり来てほしいってどこかで思ってたんだ。願ってたんだ。
もしかしたら……って縋りたかったあたしが、愚かだったんだよ。
どうしようもないほどに、ママに依存してたことに気づいた。
ここが限界だった、きっと。
不要だっていっておきながら、後悔して探してくれるなんて夢みたいなこと。
あるはずない!あるんだったら、もっと早い段階であった。
ママの言葉通り、あたしは不要な子なんだよ。
「あたしなんか、ほっといていいのに!要らない子なのに」
廊下でペタンと腰を落とし、手のひらで顔を覆った。
指の隙間から止めどなくこぼれていく涙。
太ももに大きなシミが出来ていく。
声をあげて子供みたいに泣ければ、どんなにスッキリするだろう。
一人でいるうちに、静かに泣く泣き方を身につけてしまっていた。
それに、大きな声で泣いたところで、一番気づいてほしい人には届かない。
フッと影が出来て、目の前に膝をつき、伊東さんが微笑んでいた。
「ちょっと止血しようか」
まだ滲んでいた、手首の血。
ポケットからハンカチを出し、巻き始めた。
「?」
何かぎこちなくて、その困った表情に涙がすこしずつ引っ込んでいく。
「なんか、上手くいかないな」
巻いてくれるものの、血が止まる気配がない。
「貸せって。俺の方が上手いから」
そういったかと思うと、簡単に止血してくれた。
「ほら、こうやってここを絞めるんだっての」
「あー」
和やかに談笑する二人の姿が、胸を締めつけるだけ。
苦しささえ感じる。
胸を抑えていると、心配げに覗きこむ二人の姿から目をそむけた。
「独りにして……よかったのに」
呟けたのは、そんな言葉だった。
本音なのかわかんない。なのに、勝手に出てきちゃった。
すべての感覚がマヒしてる感じ。
混乱するしか出来ないでいた。

