望んでいた生活。なのに、辛いことがある。自分じゃなきゃわかりえないことも多くなった。

甘えたいのに、甘える術がなかったあの頃。それとは違う意味で、甘えることが減った。

ただ寄りかかりたいのに、それすらいろんなことが邪魔してできない。

甘えることと依存しちゃうこと。そのボーダーの違いはなんだろう。

最近考えるのはそんなことばかりだ。

「疲れてるのかな、やっぱり」

母親なんだからがんばらなきゃって思う自分を消せないし。

「肩の力抜けばいいんだって」

凌平さんがそういってくれるけど、苦笑いしかできない。

「真面目すぎるんだってば」

「そっかな。真面目?あたし」

そう返しながら、本当はわかってた。ある意味頑固。甘えていいところを間違うことも多い。

「さ、着くよ」

「うん」

今日も会いに来た。あたしの大事な妹に。凌平さんは、車で待っててくれる。

「ゆっくり話しておいでね」

ドアを静かに閉めて、一人で歩き出す。

少し歩いて振り返る。車から出て、タバコをふかしている凌平さんが手を振ってた。

秋(しゅう)を産んで、嬉しいはずなのに、どこか苦しくなった。

ハルも赤ちゃんの時から育ててきて同じなのに、何がどう違うんだろう。

お墓をきれいにして、花を手向けて、お線香を焚いて。

可愛い水子地蔵もきれいにして、その顔をそっと撫でた。

何も考えずに、ただ手を合わせる。それで何かが変わるとかいい考えが浮かぶわけじゃない。

「アキ」

可愛い妹の名前を呼ぶ。今でも思い出す幼い笑顔。腕の中で冷たくなったアキの重さ。

罪悪感はまだ残っている。

気づけば過去の思い出に戻っていた。深く戻りすぎて、気づいていなかった。その気配に。

 影が視界を横切った。振り向くと、お兄ちゃんの姿。

「渡したいものがあって会いに来た」といい、なんとも形容しがたい表情であたしを見ている。

「渡したいもの?」

立ち上がると、大きな茶封筒を差し出した。

「オヤジから」

それだけいい、お兄ちゃんは「またな」と手を振り帰っていった。

本当にこの封筒を渡すためだけに来たよう。

「ナオトなんだって?」

凌平さんが秋を抱きながらこっちへ向かってきた。

「なんだか、お父さんからだってコレ」

この場で見ていいのかな、迷う。その気持ちのまま凌平さんをみると、「帰ろう」という。

後部座席で秋をあやしながら、またいつもの場所へと戻る。

俺が遊んでるからいいよと凌平さんがあたしを一人にしてくれた。