結婚式には初めて会う凌平さんのお父さんも来てくれた。
それまで、ただの一度も会うことがかなわなかったんだ。
相変わらずの颯太兄さんも、会う回数を重ねていくたびに印象を変えていった。
ただ、寂しかっただけ。
お父さんと同じ字を名前に持つ凌平さんが、自分以上に愛されて育った気がしたって話してくれた。
その話を聞くのは、凌平さんのおばあさんが亡くなった葬儀の場所。
あいつに言うなよと内緒でしてくれた話。
式が終わってから、小さな贈り物をある人に捧げた。
「なんで……。ナマイキよ、あんた」
そういいながら泣くシンへ、親友として贈り物をした。
ヴェールにイヤリングに、片足をちょっと上げて外したブルーのガーターベルト。
「サムシングフォーの三つをあげる。残りのひとつは、自分で何とかしてね」
「偉そうに」
憎まれ口を叩きつつも、シンの涙が止まることはなかった。
お兄ちゃんが、囁いたのが聞こえたんだ。
「お前のそばにずっといる」って。
――――それから。
「暑いなぁ。水分摂りたいのにダメなんて」
9月7日。あたしは今、初めての陣痛と戦っていた。
ママもこんな思いをしてあたしを産んだの?
暑いし、痛いし、苦しいし。
分娩室横の部屋で、あたしは凌平さんに腰をさすってもらってた。
「ごめんね、代わってあげられなくて」
そう言葉をかけてもらっても、声自体が出てこなくなってきた。
喉がカラカラ。でも産道がむくむという理由で、必要以上は摂らせてくれない。
「は……っ、痛いっ」
重く息を吐き出す。
「まだいきまないでねー」なんて呑気な助産婦さんの声。なんだか憎たらしいったらない。
そんな恨み言を頭の中でブツブツ言ってたら、腰を締めつけるような激しい痛み。
「え…、ッグ、う、ん。……あ、い、痛いっ」
息を詰めたくなる痛み。そして、もらしてないのに、腰のあたりが水だらけになった。
「看護師さん、ちょっと」
凌平さんがナースコールを押してくれ、来た看護師さんが破水したと教えてくれる。
「もうすぐよ。がんばってね、大河内さん」
ただひたすら痛みを逃す作業のような呼吸。痛さと苦しさは、さっきの何倍もあたしを痛めつける。
まだこんなに痛みが増すなんて。あれだけでも無理だって思ってた。
「まだいきんじゃ駄目。赤ちゃんが下りてくるタイミングで呼んであげなきゃ」
分娩台の手すりを握らされる。
モニターのピッピッという音に合わせ、数回呼吸を落ち着けたところで、
「はい、いきんで!おへそを押し出すような感じよ」
無茶を言う助産婦さん。

