最初につながることが出来た夜は、二人でたくさん泣いた。

凌平さんが何度となく焦れて、「俺選ぶのやっぱやめれば?」と言ったこともあった。

そういっておきながら、「マナが俺以外に抱かれちゃうの、我慢できない」とかいうし。

そんなことを繰り返しながら、そうならなくてもいいのと抱きしめたこともあった。

そのたびに凌平さんは小さな声で謝って、あたしの胸に猫のようにすり寄った。

心の傷は完治しない。それを自分の身をもって知ってるあたし。だから焦りたくなかった。

「最初に気づいてほしかったのに」

そういった、あの日の凌平さん。一緒に行った温泉旅行の時だった。

ハルをお兄ちゃんとシンに任せ、二人で初めて旅行した夜のこと。

結婚なんて考えていなかったあたし。ただそばにいてくれるだけで満たされていた。

「他の奴になんか渡さない」

あたしが他に目を向けるなんて言ってないのに、勝手に怒ってそういいながら押し倒された。

ゆるく着流してた浴衣。あたしの上に圧しかかる凌平さん。揺れる袂。だから気づけなかった。

「こんなことになったの、マナのせいだからね」

緩やかに反応しだしたその場所の違和感に気づけずにいて、凌平さんをガッカリさせた。

けれどいたずらっこのような表情で、こういったのが始まりの合図だった。

「また試してもいい?おふくろがもう出てこないのか」

あの時した約束。いつ試してもいいと。

「……いい、よ」

声にならなかった。諦めていた気持ちが多くなりつつあった日常だった。

「バカだよね。してほしいなら、マナだけでも触れてあげるのに」

そう言われても、あたし自身、ママにされたあの日からそういうことはしていない。

「怖がらないで。お互いにお互いを試しあってみようよ」

優しい囁きに、涙があふれた。

互いの痛みを感じなくなることを祈るような、その行為。とても神聖な時間。

「ちゃんと反応してくれてるの、すごく……うれしい」

凌平さんが照れ笑いをする。目尻には涙が浮かんでた。

あたしも辛かったけど、凌平さんの苦しみの比じゃない。

「だって、気持ちいいもん」

体の中から、胸の奥から、どちらからもあふれてくる嬉しいという感情が体を隅々まで満たしていく。

一度つながると互いを求めることが苦にならなくなった。それは甘い痛みへと変わっていった証拠。

そうして過ごし、出逢ってから7年。あたしはお母さんになる。

不安を絡めながら、凌平さんのもとへと急いだ。