仕事帰りの人。

お母さんと手を繋ぎ帰っていく子供。

ジョギングをしてる人。

いろんな人がいる。生活してる。

「……」

しばらく黙って見下ろしてた。

(みんな、幸せなのかな)

なんて、聞けない疑問を抱えながら。

(みんなの中の幸せってなんなんだろう。幸せって何かって知ってるのかな)

引力に従って、涙が遠い場所まで落ちていく。

ふ……と、人の流れが途絶えた。チャンスだ。

そう思って、片足を手すりにかけて、あとは体重を下に向けてしまえば勝手に落ちるだけ。

グッと身を乗り出して、落ちようとした刹那。

(え?)

次の瞬間には、ゴンという派手な音と一緒に後頭部に激しい痛み。

「うぅぅーっっ!」

もんどりうって悶える。

こういう時って、本当に星が見えるんだ。初めて知った。

悶えている耳元で、ハァハァと荒い呼吸が聞こえる。

「な、何して……んだよ」

顔だけ何とか声の方へ向けると、見知らぬ男の子。

「何って」

そういってからハッとし、もう一度手すりへと体を起こそうとする。

「やめろってんだろ!」

誰?この男の子。

ヤダ、止めないで。

死ななきゃ、ママにいいことがないんだもん。

あたしが死ななきゃ……!

「やだぁぁぁ、死ななきゃダメ、ぇ」

自分にこんなに力があるなんて、思ってもみなかった。

彼のことを突き飛ばし、もう一度足をかけようと足を上げたその時。

「あっ」

視界の端っこに、手すりに向かってよろけて落ちかけている男の子の姿が入ってしまう。

「危ない!」

上げた足を戻し、瞬時に引っ張った男の子の手。

勢いづいて、ドスンと尻もちをついた。

二人で四つん這いになって、息を切らす。

「……はぁ、危ない……って、お前の方、だ……ろが」

「だ、だって」

そう返すのがやっと。ドキドキして心臓がバクバク。

「は、ふーーっ」

大きく息を吐き、手すりにもたれかかった。

「捕獲したぞーー」

どこかに向かって叫んだ、意味不明な言葉。

「?」

首をかしげ、呼吸を整える。