「離れ、てく、の?」
凌平さんが真っ直ぐにみている。あたしの指にキスをまたして、指輪を指でなぞった。
「マナが誰を好きになったのか、もういいよ。マナのことだから、きっと愛されるよ。……頑張ってね」
さっきと違う雰囲気に、なんでこんなにかき回されてるのか戸惑う。
「俺よりもいい男だったら悔しいな」
なんていいながら、ベッドから立ち上がった。その瞬間、とっさに凌平さんの腕をつかんでた。
「……なに?俺はもう行くよ」
うっすら微笑みながら、凌平さんはあたしの手を離そうとする。
「や、やだ」
「なにが?」
凌平さんの手によって、あたしの指が一本ずつ離されていく。
「か、からかってたんですよね。ずっと」
言いたいことも聞きたいこともきっと違う。なのに、どうしてちゃんと出てこないの?
「俺が?どうやって?誰を?」
細切れな質問に、あたしは同じように途切れ途切れになりつつも何とか返す。
「凌平さん、が。好きっていって。……あたし、を」
浮かれないようにしてた気持ち。好きって本気で言ってもらえるなんて思ってないもの。
違ってた、やっぱりだったんだ。
「こんな、長い時間も……からかってた、んです、か」
からかわれてて、腹が立つより。
(切ない。いつの間にか心の奥で、本物の気持ちだったらいいのにって思ってたんだ、あたし)
痛いくらい気づかされた。
「やっぱり期待しなくてよかったんだ。誰かが気になるなんて気づいたら、こんなにも胸が痛いんだもん。ダメなんだ、ダメなんだよ。やっぱり。恋なんてしたことないんだもん。なにも知らない子は、恋しちゃダメなんだ」
「マナ……」
声が、体が震えた。それでも吐きださずには、凌平さんとお別れ出来そうになかった。
「さよ……な、ら。凌平さん」
幼い胸に芽生えかけた恋は、このまま枯れてしまえばいい。
「さよなら」
もう会えなくなるのなら、最後の最後に笑おう。
冗談だったとしても、あたしの笑った顔の方がいいと言ってくれた。
なら、その顔で見送りたい。
笑うんだと気持ちを起たせた。のに、顔に痛みが走った。
「……いふぁい」
両頬を、思いきり引っ張られた。前に引っ張られた時の比じゃない。
「冗談じゃない」
そういい、さらに引っ張る。涙が浮かぶほど痛い頬。
「ろうふぇいふぁんっ」
アチコチ痛いのに、これ以上やめてほしい。手を押さえようとした時だった。
「バッカじゃん」
そういったと同時に、あたしは凌平さんの腕の中にいた。

