学校に行っても、今日もまた睡魔と闘いながらの勉強。

あの電話以降、少しずつ変化があった。

郵便受けから、ゴミが入れられていることがある。

ドアを開けると、玄関に散乱するひどい臭いのするもの。

ドアを開け放したまま、片付けをする。

何度も消臭剤を撒き、それを済ませてからじゃなきゃ勉強が出来ない。

睡眠を削るいたずら電話に、ゴミ。

電話だけでも滅入ってたのに、とどめを刺された気分で。

学校に来たら気が緩むのか、限界なのか。とにかく眠い。

そこに来て、伊東さんのこと。

もう嫌だと口から出かかるのを、何度も飲み込んでいた。

そんな繰り返しを経て、その日が来ていた。

 ママに殺されかかった日に、あたしが一度死んでしまったとするなら。

もしもそうなら、あたしはもう一度死ぬことになる。

それは一本のメールがきっかけだった。

(生温かいんだな、人間の血って)

そんなことを水面に滲む紅い色をみながら思ってた。

呑気なことを思っていられる以上、あたしはまだ生きている。

もっと簡単に死ねるんだって思ってたのに。

「どうして死んでくれないの?」

自分に叫ぶ。ボロボロと涙が溢れた。

(こんなやり方じゃダメなんだ。もっとちゃんと死ななきゃダメなんだ)

濡れた制服のまま、バスルームから出て、外に出た。

夕暮れ。オレンジの空の色。

アスファルトに指先から落ちて、点になってくあたしの血。

もうすぐ夕食の時間だ。近くの家から、魚が焼ける匂いがする。

「こっちの家はカレーだ。……うん、いい匂い」

こんな状況下でも、お腹は素直に反応してる。

死のうとしているのに、ホント滑稽。

「あ……はは」

力なく笑う。バカみたいな自分に向かって。

(死にたいんだよね?死にたいんでしょ?死ぬんだよね?)

摺りこむように繰り返す言葉。

泣きじゃくりながら、緩やかな坂を登っていくとその場所が見えてきた。

まばらな人影。

みんなあたしに気づいてない。

濡れた制服にも、指先から落ちていくものにも。