笑い転げる二人をしばらく見てるしかできずに、ただ待ってた。
ため息なんかつきながら、何をしたのか分からないまま時間だけが経った。
「はーっ、スッキリしたぁ」
そういい、笑うのをやめたのは心さん。
「なんで笑ってたのかわかんないし、勝手にスッキリされても困るよ」
すこしムカッとしてた。話を早く聞きたいのにって思ってたのもあったもの。
「あはは、ごめんね」
目尻の涙を指で拭って、凌平さんと目を合わせてからまた吹き出す。
「……笑いたいだけ笑っていいけど、早く話を聞かせてよ」
それだけいうと、「本当にごめん」と二人がやっと呼吸を整え呟いた。
「で、本当に自分がしたこと気づいてないの?マナ」
凌平さんに再確認されて、うんと頷く。
「あんなに思い切り思ってること、口にしてて?」
「思ってること?」
何か言ったっけ。
「あれ、独り言のつもりだったの?」
よくわからないけど、とりあえず頷いた。それをみた凌平さんが、
「もう、本当に可愛いなぁ」
なんていいながら、さりげなく頬にキス。
真っ赤になって凌平さんをみると、心さんが「はいはい、そういうのは後でね」なんていった。
「さ、続きね」と始めた、話の続き。
ママが妊娠して、流産しかかったこと。そこまで話を聞いた。
「堕ろしたいって言い出したらしいの」
「あ……」
妊娠をしたと聞いた時、もう産みたくないだろうなとは考えた。やっぱりなって感じ。
「でも、ナオトのお父さんは産ませたいみたいよ」
「そうなん、だ。そ……っか」
「それで、あんたの母親が、産んでも育てないからって言い出して」
「で、二人が病院に行ってるってわけ」
凌平さんが言葉を締めて、そこでその話は終わったみたい。
「そっか。あたしの妹か弟が出来たんだ」
目を閉じると浮かぶ、2歳のままのアキの顔。歌を唄ってあげたら、すごく笑ったっけな。
「育てたくなんかないよね。あたしみたいになっちゃうの、嫌だろうし」
今のママとあたしの関係を思うと、とても産んでだなんて言えない。
「どういう話し合いになるのかわからないけど、二人が戻ってくるのを待つしかないわね」
「うん、そうだね」
力なくそれだけ返した。その時、病室のドアが開いた。
「おい、凌平。入っていいのか」
体半分を病室に入れて、先生らしき人が入ってきた。
「あ、あぁ。どうぞ」
急に凌平さんの顔つきが変わる。
「警察の方には、手を回しておいた。うちの関係者の知り合いに、こんなのがいたら面倒だからな」
「……そう。悪かったね、手間かけたみたいで」
「そうだな。あと1週間ほどで退院していいからな」
「わかった。この子の親に説明しておく」

