それに気づいたのは、自分の母親の存在。女の子が欲しかった母親が、自分にしたこと。
幼い頃に自分と母親以外が出かけた時だけの秘め事。女の子の服を着て、一緒に出かけた。
それになんの抵抗もなく受け入れることができた自分。
周りにいた同性に感じた違和感。異性に感じていた嫉妬に近いもの。
それをどう捉えていいのかわからなかった、中学生の自分。
やがて見つかった、母親との秘め事。
兄たちを差し置き、自分を将来は道場主として考えていたという心さんの父親。
親族会議まで開かれ、そんなにイケナイことなのかと苦悩したこと。
心さんの母親は畳にのめり込むほど頭を下げていたという。
でも心さんの中では、謝って欲しくないことだった。イケナイことじゃないと思い始めていたからこそ。
心さんは母親と別に暮らすことになり、腫れ物に触るような扱いを受ける。
思春期に恋をしても相手は同性。
父親はそれを許すまいと過剰なまでの反応をし、稽古と称していたぶられた。
心が汚れているからそういうことになるのだ。お前の名は、そんな汚れた名前ではないと言われた。
自分の心に触れてくれない。母親の寂しさから気づけたことだとしても、そういう自分が真実なのに。
親とはなんなんだと悩み苦しんだ。一緒に悩んでくれるものではないんだと気づかされた。
やがて受験の時期になり、心さんの父親はある高校に推薦入学をさせる。
身内が理事をしている高校に。
敷地内に理事の家があり、そこで暮らすことを余儀なくされた。
そして、その理事は、父親以上に心さんを虐げた。性的な暴力で。
「同性が好きなんだろう?なら、俺でも同じだろう」
そういい、初めてを身内に奪われた。汚らしい俗物めと言われながらの行為。
誰もが自分を見ようとはしなかった。
それでも小さな抵抗を続ける。それは女の子の格好で過ごすこと。それだけ。
閉ざしていく心に、光が射した。それが、
「それが、今、一番愛おしい人です」
いいながら視線をこちらに向けた。お兄ちゃんの方に。
けれどお兄ちゃんはその視線から目をそらした。
(お兄ちゃん、どうして今)
付き合ってるんだよね、心さんの何もかもを知ってて。不思議に思いながらも、続きを聞く。
「心は女として生きたい。でも周りは男の私を求める。ぶっちゃけ、だから何よ!って言いたい」
今までの経緯を話していた時は、気のせいかどこか寂しそうにも見えた。

