なかなか引かない腫れ。
このまま学校に行くわけにもいかず、熱が出ましたと嘘をつき休み続けた。
休んだ初日、担任からは弛んでるからだと言われた。
胸がぎゅっと痛んだ。悲しくなった。
三日目あたりの電話の時には、副担任が、大事な時期だから無理をしちゃダメだぞって言ってもらえた。
それがひどく嬉しかった。
「あー、お腹空いたな」
今日、何度目だろう。買い出しに行けないんだから、しょうがないか。
湯ざましをコクンと飲み、冷凍していたいつもの味気ないパンを焼く。
香ばしい香りにお腹が鳴った。
伊東さんも変わらず来ていたけど、ドアノブにかけられるレジ袋を放っておくと、来なくなった。
万が一を考えて、受験勉強を進めていく。
けど、空腹は集中力を奪っていく。そのスピードはとても早い。
「食べてるそばから、お腹減っちゃうな」
なにかを噛みたくて、指を噛む癖がついた。
軋む音がするほど噛むと、肉の味がするんじゃないかって。
赤ちゃんの指しゃぶりみたい。かっこ悪いってわかってる。
「誰も見てないしね」
とか言い訳つけて、寝転がって指をしゃぶり続けた。
勉強をして、お腹が空いたらパンと湯ざまし。
そして、指しゃぶり。
それを繰り返し、腫れが引くのを待つ。
腫れが引けば、学校に行ける。
学校に行けるということは、お金を下ろせるということだもん。
「あー、まだ紫のまんまだ」
鏡をのぞいては、ため息を洩らした。
そうして数日経ったある夜、携帯電話が鳴った。
画面には公衆電話と出ている。
「はい、もしもし」
出ると、切れる。
「誰だったんだろ」
眠い目をこすって、またウトウトする。
わずかな時間を置かず、また鳴る。次は非通知。
「眠たいのに」
イラつきつつも出ると、また切れた。
「……なんだろ」
大きくため息をつき、また眠る。
結局この夜は眠ることを許されなかった。
4日もこういう夜が続いた。
起きることができず、学校への連絡を忘れ眠っていた。
聞き覚えのある、ママの好きな歌が流れる。
ママ専用の着うた。

