カタンと物音がした。

けど眠気の方が勝ってて、確認する気が起きなかった。

「マナ」

聞き覚えのある声に、頭の中が一気に覚醒した。

「マ、ママッ!」

テーブルに突っ伏してた体を起こして、ママに近づこうとした次の瞬間。

(え?)

夢見てるんだって思えたらいいのに。

これは現実じゃないって誰かに言ってほしくなった。

「マ……マ……」

ママがあたしを押し倒し、馬乗りになって首を絞めていた。

顎が上がるほど、ギュウギュウと締めつけられている。

息が出来なくなる。

「マ……」

頭の先がほわぁっとなって、白くかすんできた。

首を絞められて死ぬって、こんなに時間がかかるの?

こんなにも苦しいの?

会いたいと思ってた。声が聞きたいって願ってた。

こんな再会、願ってない!

あの日から泣かずにいたのに、涙がひとつ目尻から耳に向かってこぼれた。

「ふん……。泣いてるの?あんた」

ママの声。低くて、重い声。

お客さんと話してる時の甘えた声じゃない。

「苦しい?ねぇ」

そういえばママって、あたしと話してた時ってどんな声だったっけ。

歪んでいく目の前のママの姿に、そんなことを今更のように思い出す。

でも思い出せない。

「あんた、あたしの人生の邪魔してんじゃないわよ」

締めつける手に、もっと力がこもった。

あきらかな拒絶。

邪魔するようなことなんかしてない。

静かに一人で暮らしてただけなのに。

「いっそ、死んじゃって。消えてよ、ねぇ」

白くもやがかかったような感覚が、ゆっくりと暗くなっていく。

(アキ、ごめんね)

心のどこかでアキの分も生きようと思ってた。

勝手に決めてた、アキへの約束。それを果たせないのが哀しかった。