ある日の天神学園。

教頭室のドアがノックされる。

「どうぞ」

黒々とした美しい髪、優しげな茶色の瞳。

穏やかに言ったお初の声に。

『し、失礼します…』

少し緊張した表情で入室してきたのは小夜だった。

「おや…小夜ちゃんじゃないか…珍しいねえ…」

目を細めて笑うお初。

クシャクシャの笑顔は、何となく小夜に安心感を与える。

「そこに座りなさい、お茶を淹れてあげるから…それから…こないだ美味しいお饅頭を保険医に貰ってねぇ…あの子ったら甘党だから、美味しいお菓子に詳しいのよ…男の子なのに可笑しいわよねぇ」

そんな事を言いながら、どこか祖母を思わせる天神学園教頭・お初は笑い声を上げた。