「やめろ、兄さん。」 主人が、刃物を持つ手を止め、振り向く。 ドアを静かに閉じて、その人は入って来た。顔色が違うだけで、まるで別人。 それは主人が最も憎む男だった。 男はー紀一は、静かに主人を見つめた。 主人も、それに睨み返す。 そこにあったのは、この兄弟の、因縁とも言うべき静かで暗い闇の姿だった。