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話終えて、厚子は大きく息を吐いた。

さくらは、ただどこかを、表情もなく見つめていた。

そして、はっと気付いたように、

「その手紙は…紀一さんには?」

「先生はその後、ご実家の病院に入院されたきり、お会いすることが出来なかったから、まだ渡せていないの。」

そして、看護師服の懐から、封筒を取り出した。

「読んでみるといいわ。」

「ぇ!でも…。」

さくらか躊躇したが、厚子は微笑んだ。

「あなたなら読んでいいと思うのよ。」

本当に自分が読んでもいいのだろうか。

(だけど知りたい。
紀一さんが愛した女性が、どんな言葉を、最後に紀一さんに残したのか。)

さくらは、一息ついて、静かに封筒を開いた。