監禁恋情

「紀一さん…どうすれば、あなたを助けることが出来ますか…?」

紀一の手をしっかり握りしめる。
細い手首は骨の形がくっきりと浮かび上がっていて、痛々しかった。
さくらは、その手に頬ずりする。

「目を覚ましたら、また死のうとしますか?」

紀一の手に、さくらの涙が落ちる。
もう、辺りは暗くなろうとしていた。
病室からの夕焼けが美しい。

「…ねぇ、もし、まだどうしても死にたかったら…」

私も…一緒に…。
その言葉を口にしようとしてやめた。
紀一を救おうと決めたばかりじゃないか。
これではただ自分が側にいたいだけだ。

コンコン。

病室がノックされた。


「はぃ…」

涙を拭いて、弱々しく返事をした。

和樹が、ゆっくりと入って来た。
手には数枚のタオルと洗面器に入ったお湯。
それから包帯。

「泣いていたんですか?」

心配そうに言われ、さくらは俯く。

「足を見せて下さい。」

さくらが「だっ大丈夫です」と慌てて断ると、和樹は少し不機嫌そうに「いいから。」とさくらの足首を持った。

白い足に刻まれた傷は、もう血が止まり、血の跡だけが残っていた。

和樹がタオルをお湯に入れて、さくらの足を丁寧に拭く。

少しの痛みに、さくらが顔をしかめると、「すみません。」と和樹は謝った。


「本当なら、きみを連れ去ってしまいたい。」


和樹が言った。
タオルでさくらの足を拭き、包帯をゆっくり巻く。

「和樹さん…」

「僕は紀一さんを許せません。
あなたに傷をつけるなんて…」

「…」

「守ってみせる。俺なら。」

跪くように、さくらを見つめる和樹。

こんなにも優しくて、頼りになる。
きっと和樹と行けば幸せが待っているだろう。

…だけど。

「そんな…泣きそうな顔をしないで下さい。」

優しく、頭を撫でられた。

「わかってる。きみは紀一さんが好きなんだ。」

「…ごめんなさい…」

ありがとう。と、さくらが呟いたのを聞いて、和樹は切なげに笑った。