欲しい…。

さくらは、自分の中に今まで感じたことのない感情が湧き上がるのを感じた。
紀一と出会ってから、こういうことは何度もあった。
知らない感情。
逆らえないほど、強い思い。

紀一が愛しくてたまらない。
小さいときからわがままなんて言えなかった自分が、こんな思いを抱くなんて、どう考えても普通じゃない。

でも、さくらは紀一が欲しくてたまらなかった。

自分だけを見て欲しい。
毎晩叫び狂うほどの強い思いを、自分にも抱いてくれたらいいのに。

「きっと私はやきもちをやいているんだ。」

さくらは呟いた。

ドキドキと、胸が踊る。
悲しいほどに、さくらの中は紀一でいっぱいだった。