目に映ったのは、彼女がよく好んで着ていたようなふんわりとしたワンピース。白い足がこちらに近付いてきて、男の肌に触れる。


愛…。


「大丈夫ですか?
紀一さん…。」


声が違う。
気付いて、顔をあげると、そこには、愛ではない、名もない少女がいるだけだった。

愛に似ても似つかない顔なのに、何故今自分は彼女を愛だと思ったのか。

少女は心配そうに、こちらを見つめている。

兄に、愛の代わりに連れて来られた少女。
なにも知らない、名前も持たない哀れな少女。



…吐き気がする。