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愛と出会ったのは、自分の勤めていた病院でのこと。

愛は、精神を患って入院していた。

そして自分は、その担当医だった。


愛は、美しい女性だった。
あまり体を締め付けない洋服を好み、自分の長い髪が好きだと笑う。
記憶の中の彼女は、いつも笑顔だ。本当に、子供のようによく笑う。

彼女の担当になってしばらくたったある日。

彼女は、医師の部屋にひょっこりと顔を出した。

「やぁ、愛ちゃん。」

自分が声をかける。
幼い子供に声をかけるように、あまり大きな声を出さず、ゆっくりと。

「先生の嘘つきぃ。」

愛は愉快そうに笑った。

「おや?俺が何かきみに嘘をついたかぃ?」

「先生は嘘つきよ。
あたし病気なんかじゃないもの。」

クスクスと笑った。
自分が、困った顔をしていると、彼女はスリッパでぺたぺたとこちらに近づいて、にこっと笑う。

「病気なのは、私じゃなくて先生でしょ?」

その言葉に、自分は一瞬驚き、しかしすぐに穏やかな表情を取り戻した。
彼女は、嬉しそうに手の平で男の頬を挟んだ。

「本当に嘘つきね。」