兄は何を考えているんだ。
生きることを半放棄して、自分の精神すらまともに支えきれていないような自分に、人一人の命を預けるなどと。

部屋に戻り、散らばったものを蹴飛ばした。

あの少女も何を考えているのか。

―せめて名前が欲しかった…―

少女の台詞を思い出した、
あれでは何もかもわかっていたかのようじゃないか。わかっていてここまで来たのか…。

何を考えてもどうしようもなかった。
男には全て荷が重すぎた。

「…あの…」

ドアが開き、少女がこちらを見つめていた。
男は一度ジロリと少女を睨んで、やがてため息をついた。