監禁恋情

結局、その後2人で二度寝をして、起きたのは10時を過ぎた頃だった。


軽く食事をした後、紀一は担当の患者の様子を見てくると言って出掛けて行った。本来今日は休みのはずだが、紀一は休みの日でも少しの時間病院に顔を出しに行く。
こういった真面目な性格だからこそ精神を病んだのでは、と以前会った時に和樹が呆れていた。

そうかもしれない、でも、精神の病を治すのは簡単ではないらしい。だからもしいつか紀一がまた不安定になったとしても、自分が支えていこうと思っている。


紀一が出掛けている間に、さくらは食事の買い出しに出た。


初夏の太陽がさくらの白い肌を照らす。

今日の夕食の献立を考えながら、さくらは歩いた。
歩いていると、じんわりと汗がふきだしてくる。

歩きながら、さくらは先程見た夢を思い出していた。

あんな風に過去のことを突然思い出したことなど、今までにない。
どうして突然父親のことなど思い出したのだろうかと、不思議に感じた。

(忘れたままでよかったのに)

夢で感じた、繋がれた手が、離される感覚。
それを思い出して、さくらはため息をついた。

親に捨てられ、名前もないまま施設で育てられた自分を不幸だと感じたことはなかった。自分を不幸だと思ってしまえば、幸せになりたいと願ってしまうから。
自分にとって、今の不幸よりも、幸せを願っても、絶対に叶わないことを知ることの絶望のほうが恐ろしかった。
だから自分は今まで、どんな環境も無感情で受け入れてきた。

だけど紀一と出会って、再び誰