「ちょっと!和也聞いてるの?
あんたがうちを無視するのは別にかまわないけど
また、今晩も夕食ぬきだからね。」
…今晩も?
それって虐待?
「ちっ。どいつもこいつも…あっ先生。
うち少し出かけるんで、勝手に部屋入ってよ。
もしかしたら死んでるかもだけどさ」
彼女はそう言って、派手なコートを纏い
鍵もかけずに出て行ってしまった。
和也君…「和也君!」
私はスニーカーを脱ぎ捨てて
走って階段を駆け上がり、ノックをした。
「和也君!あたし!美樹!
ここ、開けて!」
今にも消えてしまいそうな声で「あ…いつは?」
と、ドアの向こうから聞こえた。
「出て行った。いないよ?だから早く開けて!」
お願い。和也君。
声がもうカスカスで…
あれだけ元気な和也君が…
その瞬間、"カチャ"って鍵の空く音がした。
急いでドアを開けたら、
部屋は真っ暗だった。
何がどこにあるのかさえ見えないほどに。
まるで暗闇のサウナだった。
こんな部屋に、1日も普通は居れない。
私は手探りで和也君を探した。
