「許せなかった。だから女に"出ていけ!"
って言ったんだ。」
「うん。」
「そしたらあの女、親父に言いつけて
俺が親父に殴られた。
俺、その時怒りとかよりも悲しくなってさ。
あんなに俺たちの為に一生懸命だった親父は
もぅ居ないんだなって…」
「うん。」
その時、山本君の頬から一筋の涙が
流れ落ちた。
「親父の選んだ女なら、受け入れようと
思ったんだ。その女が俺らを大切に
想ってくれるなら…
だけどその女は、大切にするどころか
俺らを邪魔者扱いしやがった。
その頃から親父は荒れて、飲酒がひどくなって…
俺は、和也を残して家を出た。
逃げたんだ。
だけど今は後悔してる。
和也を残して行ったこと。
最低の兄貴だよ。」
山本君は和也君が眠るベッドに顔を埋めて、
何度も何度も「ごめんな」と呟いた。
