ファンに道路へ突き飛ばされた私。
気付いた時、私の手の中は真っ赤だった。

私をかばって大型トラックに轢かれた智也。
彼の頭部からは大量の血。
救急車の音が私を混乱させた。

「関係者以外、立ち去って下さい」

警察が野次馬やファンを立ち去るよう交通整備を行っていた。
私たちは緊急で病院に運ばれた。
徐々に意識が遠ざかっていった。



「ここは‥」

目を覚ますと、そこは個室の病室だった。
右腕には点滴がしてあり、頭には包帯が巻かれていた。
智也は?
そう思って、点滴台を引きづりなから病室を後にした。

一階へ歩いていくとマスコミが沢山居た。
急いでエレベーターへ乗り、三階の集中治療へ足を運んだ。
その近くの手術室には赤いランプが灯っていた。
手術中、そう示しながら。

「小泉さん、部屋へ戻りましょう」

通りがかった看護士に見つかってしまった。
思わず瞳から涙を零す。
私のせいだ。
その場で崩れるようにしゃがみ込んだ。
すると、手術中の扉が静かに開いた。