「まぁ、とても綺麗、ありがとう」
菫から春の匂いがほのかに香ったので自然に笑みがこぼれる。李梗は、弥夜の笑顔が見られたことが何より嬉しかった。
姉妹の周りに穏やかな雰囲気となっているところに、咳払いが聞こえた。
「コホン! 花など、どうでも良いではない……。今、弥夜様は勉学中なので、室に入るのは控えて下さらなければ困ります」
講師は、憤慨な態度を見せた。まだ、勉学を学んでいない李梗が断りもなく室に入ることが不謹慎だと感じた。
「花をあげれば、姉上は、お喜びになると……」
李梗は、今にも涙腺が緩みそうだ。
「やめなさい。私の妹ぞ。勝手に室に入ったが、悪気はなかったのです」
「これは、とんだご無礼を」
弥夜の言葉で講師は慌てて、畳に頭を下げた。
弥夜は優しくて、李梗は心から慕っていた。母親は、違っていたが姉妹の絆は強かった。弥夜は純粋で心優しい姫である。
いつも穏やかで大変、賢い女子である為、手下からも慕われていた。
弥夜も李梗を大切に思っていた。この姉妹の絆はこれからも深くなっていくだろう。
