「姫様、そのままでは、お手を触れたら手を切ってしまいまする。この、和鋏をお使い下さい」 女子に和鋏を渡したのは乳母であった。女子は和鋏を受け取り菫の花柱を伐った。女子の顔は満足そうに笑みを浮かべた。 「綺麗に御座いますね。生け花になさいますか?」 女子は、首を横に振った。 「ううん。姉上に差し上げるの」 「それは、姉君様はお喜びになられますよ」 その言葉を聞いて眼を細め嬉しそうにまた笑った。