「父上様、弥夜に御座います」
「入るがよい」
襖を開けると王は書物を読んでいた。書物は、儒学書のようだ。
「どうした?」
王は、弥夜の顔を見て何かを察したのか儒学書を閉じ文机の上に置いた。
「李梗に従者を付けたことはまことでございますか?」
不安そうな眼で王を見た。
「何を不安そうにしている。李梗に従者を付けたのが気に食わないの
か」
王の威厳に弥夜は、怯みそうになった。
「ですが、李梗は、まだ八つ。姉である私には従者を付けず、何故、李
梗に付けたのですか?」
「お前は、聡明であるため、従者はいらないと思っておる。不安になる
事はない。お前なら従者など付けなくとも優れておるからだ」
別に不安になどなっていないと自分に言い聞かせた。なぜ、妹が優遇
されたのかその理由を聞く為に自分は王の室へ参ったのだと分かったと
きその事実を受け入れることができなかった。
しかし、王から気に食わないのかと問われたがはっきり否定できなかっ
た。
自分は聡明だという理由で従者を付かないと言われたが怪訝な顔
をする。
