孝平が、近所から少し離れたこのコンビニでバイトを始めた理由。
 それは、中学の頃から孝平が好きな後輩が近くに住んでいるからだった。
 その子は、あたしの後輩でもあって、コンビニに行くのが日課と自らが語るほど大のコンビニ好きだったのだ。

 (卒業してからも、その子に会いたくてバイトまでしちゃうなんて……)

 玉砕覚悟で当たる方が男らしいと思いながらも、実際そんなことが出来る奴じゃないことも分かってる。
 けれど、こんなことになるくらいだったら、ちゃんと教えてあげればよかったとも思う。

 (後輩ちゃん、ただ単にコンビニが好きだったわけじゃなかったのよねぇ)

 通い詰めるほど、コンビニでバイトをしているお兄さんのことが好きなのだということを聞いたのは、彼がバイトを始めたことを知った夏休みのことだった。久しぶりに部活を頑張る後輩たちに差し入れを届けに行った時に聞いたのだ。
 唯一の救いは、孝平がバイトをしているコンビニとは別のコンビニの店員だったということくらいだろうか。

 それから数ヶ月が過ぎて、先週。クリスマス1週間前。
 孝平のコンビニに、後輩ちゃんは、通い詰めたコンビニの店員のお兄さんを彼氏にしてやってきたのだという。

 「ごめんね」

 怒っているのに、どこか寂しそうな孝平の横顔に、思わずそんな言葉が飛び出した。

 「な、なんで、おまえが謝るんだよ」
 自分でも、思った以上に真面目な声が出て、逆に孝平が慌ててる。
 そんな様子を見ながら、苦笑する。

 もしかしたら、もっと早くに後輩のことを伝えていれば、クリスマスに彼にこんな顔をさせないでいられたかもしれない。
 もしかしたら、他に新しい恋を見つけて、今日を楽しく過ごしていたかもしれない。

 けれど、あたしはあたしのエゴで、彼に前を向いて欲しくなかったのだ。

 (後輩ちゃんを好きている限り、彼の恋は叶うはずがないと思っていたから)


 「いや、なんとなく。でも、本当に、傷口開きに来たわけじゃないんだよ? 一応、心配してるんだから」
 たぶん、昨日から来ているメンバーも。
 意外と傷つきやすい、同級生を心配して。

 「…………わかってるよ」

 そうやって、切なげに微笑んでしまうところもカッコイイと思ってしまうんだから、どうしようかと思う。
 とりあえず、今日を皮切りに、あたしも何か変えていかなければいけないと、彼を見ながら考えていた。

●コンビニにカッコイイお兄さんがいたら通うのになぁ。可愛い子は見つけるけれど、なかなかカッコイイ人っていないんだよなぁ。