先ほどと同じテンポでテンションで、店員さんが胸ポケットから名刺を取り出した。そして、その下に何か書いている。

 (? 名刺?? 本日、更新作業を担当させていただいた○○です、とか言うの?? たかが更新作業で??)

 そう思った瞬間、ありえない妄想が浮かぶ。

 (ま、まさか、ナンパ?! 受け取ったら、相手の携帯番号が書いてあるとか?!)

 自分の格好が、そんなに可愛いものだったとか、そんなに今日のわたしっていい感じ?? とドキドキしながら待っている……と。

 「お待たせしました。こちら、更新の特典となりまして、レンタル料が1回無料になる券の代わりとなっております。是非次回おつかいください」

 (…………そーですよね)

 一瞬、ありえなさすぎる妄想をした自分を冷めた目で見直す。
 自意識過剰もいいかげんにしろって感じだ。

 「ありがとうございまーす」

 わたしは適当に返事をして受け取ると、足早にレンタルショップから出た。

 「あー、寒いなぁ」

 身も心も寂しいから、あんな妄想をしちゃったのかもしれない。
 (あいつんとこ、押しかけよ)

 レンタルした映画を見たいと騒いでいた片思い中の男友達の家に向かって、わたしは歩き出すのだった。

●ちょっぴり知り合いの実話をもとに構成。